「散るぞ悲しき」 硫黄島総指揮官 栗林忠道  梯 久美子


「散るぞ悲しき」を読んだのはもう4年ぐらい前であろうか。
前々から気になっていた本だったのだが、読んだのは文庫本になってからだった。
読んでみるとこれまでの戦記物とは、大きく異なる内容だった。

この本は、戦史に残る激戦地、硫黄島の最高司令官、栗林中将にスポットをあてている。
この稀有な将軍は、硫黄島で何を考え、何をしようとしたのか。
普通の戦記では、作戦内容や特筆すべき戦闘の様子などが中心となり、ここに記載されているような戦地の将軍と家族との私的な手紙のやりとりや、家族や縁者の心情を丹念に紹介するようなことはないであろう。

さらに筆者はこれまでに公開されている資料についても丁寧に読み返し、
適切な解説を加えている。
このことから栗林中将の人物像をより説得力のあるものとしている。
栗林中将は、実際大変魅力的な人物だ。

硫黄島の戦いでは日本軍2万1千名の守備隊のほとんどすべてが戦死したため、
彼らの戦いぶりや戦死時の様子などが遺族に伝えられることはほとんどなかった。
兵士の多くは30歳以上の妻子ある応召兵であったという。
ありていに言えば近所のおとっつあん達である。
おとっつあん達は家族や国を守るため、必死に戦って死んでいった。

この本はなによりも、日本の本土防衛の最前線で散っていった将兵達の心情を代弁しているようで、
涙なしには読むことが出来ない。
まさに「散るぞ悲しき」なのだ。

何回も読み返したら表紙がなくなってしまった。
日本人ならぜひ一度読んでもらいたい一冊だ。